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地形を表す地名


地形を表す地名

今回は人々が長年の間、生活の中から小地域の地形の特徴をつかんで、その場所の自然環境を適切な言葉で端的に表現したような地形語...を取り上げてみたいと思います。私たちの住む高梁市は、高梁の町や落合町阿部などに見られるような、川が刻む谷壁こくへき斜面や谷底たにぞこ平野といわれる平坦面(氾濫原)はわずかで、ほとんどの地域は海抜二五〇.五〇〇mぐらいの「野呂」といわれる高原状の山地が占めています。

この「野呂地形」といわれる高原は、中国山地の南側で岡山県東部から広島県にかけて広がっていて山々が波浪はろう状にうねり小起伏きふくをつくっていて、隆起準平原.....といわれる老年期の山々が高原状に広がる地域で「吉備高原」と呼ばれています。波浪状の高原には、小さな平坦面が発達していて集落が点在しています。

このような高原には地形の起伏を言い表した地名がたくさん見られるのです。「狭間」(「地名さんぽ」一〇参照)や「迫さこ」(同二七参照)「野呂」などはもちろんのことですが、これ以外にも低いところから高いところにある集落など指して表現されている「空そら」という地名、高原上の台地が緩ゆるやかにうねって凹地くぼちや谷合など窪んで低い土地を意味する地名に「窪くぼ」(「久保」)とついているもの、例えば川面町の「前久保」、「前窪」、「大久保」、宇治町の「窪」、高梁から上ったところの「大久保」など、いずれも土地の起伏を表現し、水田があって水に恵まれた場所を指す地形地名の代表的なものなのです。

また、中井津々には石灰岩地形を深く刻んでいる渓谷のある場所や、玉川町舟津付近の谷のあるところには「沢」という谷を表す地名が見られます。そして、吉備高原地帯ではおなじみの地形地名に「畝うね」(「畦うね」)があります。高原上の風景で小高く連なった丘陵や峰の頂上のような地形を表現する地名で、巨瀬町の「中畝なかうね」、松原町に見られる「笹畝ささうね」とか「タコウ畝」、五社神社上付近の「平木畝」、宇治町の桜公園になった「高畝」、川面町八幡神社付近の「宮畝」、そして「西畝」、「畝脇」、「畝高うねたか」、友行付近の「馬場畝」、落合町原田の「畝」など高原上の土地のうねりを表す地名が各地に分布しているのです。

現地に地名を尋ねて歩いてみると土地利用の仕方、その場所場所の地形の特色などをうまくとらえて言い表しているし、また、その地名を知って見ると地形の特色が納得できて一層「地名」というものの面白さを味わうことができるのです。これらの小地名は、地名発生の基礎といえるのかも知れません。

[地名の由来]