保月の三尊板碑と六面石幢 「板碑」とは、仏の供養のために建てられた石塔婆の一種。有漢町上有漢にいたびある保月の三尊板碑は、花こう岩でできており、高さ315、幅43、厚さ30ほづきと非常に大きく、釈迦、阿弥陀、地蔵の三尊が見事に彫られています。 板碑しゃかあみだじぞうは関東地方に多く見られ、岡山県下はもとより瀬戸内地方では数少ない貴重なものです。石造美術品としても優れたもので、記銘から鎌倉時代の大和(現在の奈良県)の伊派石大工の名工・井野行恒の嘉元3年(1305)の作であいはいのゆきつねることが分かります。 また保月の六面石幢は、同じく井野行恒により、嘉元4年(1306)に彫られせきどうたものです。「幢」とは、仏を供養するため、仏像や教えを書いた細長い旗で、それを石で表現したものが石幢です。保月の六面石幢は、花こう岩製で総高264。第1面には7つの仏が彫られ、その下に造立の趣旨、そのほかの各面には1仏と銘文が刻まれています。 保月の三尊板碑と六面石幢は、ともに昭和36年、国の重要文化財に指定されています。なお、備中町の笠神の文字岩を刻んだ伊行経は、井野行恒と同一人物と考かさがみいのゆきつねえられています(参考文献:「有漢町史‐通史編-」)